“ミリタリー”旋風吹き荒れる
1970年代スタイルへの傾倒はそのままに、強い男の象徴である“ミリタリー”、着る人によってコーディネートの幅が広がる“変幻自在のデザイン”がトレンドとして台頭。今シーズンの1970年代回帰はエイジド加工をほどこしてダメージを与えたり、クローゼットに眠っていたアイテムを引っ張りだしてきたようなヴィンテージ感が強いのが特徴だ。また、“ミリタリー”は肩章やハーネス、金ボタンといったパーツを抜き出して、ロマンティックなアイテムに落とし込まれている。“変幻自在のデザイン”は着脱可能なパーツ、ボタンやカッティング技術により何通りものシルエットが再現可能となる。ミリタリーに限っては、パリメンズのほうが装飾や伝統的なディテールにこだわり、デザイナー毎により複雑な解釈が目立った。
パリメンズで注目したいのはミリタリースタイルを極めた「DRIES VAN NOTEN(ドリス・ヴァン・ノッテン)」と先シーズンからすでにコーディネートが自在に広がるデザインを追及していた「MAISON MARGIELA(メゾン・マルジェラ)」。「DRIES VAN NOTEN」は肩章や勲章、金モール刺繍、スコットランドの軍服であるキルトスカートといったミリタリーのパーツを切り取り、エレガントなメンズアイテムとして再構築。トレンチコートを上下にカットし新解釈のレイヤードスタイルとして仕立てたり、鳳凰の刺繍をほどこしたブルゾンに勲章や肩章をアップリケしたり、スウェットパンツにニットのバミューダパンツを重ねるなど、一つのコーディネートに様々な要素を盛り込んで、ミラノとは一線を画す装飾的なミリタリーを完成させた。
「MAISON MARGIELA」は1989年から2010年までドイツで開催されていたレイヴ・イベントからインスピレーションを得て、1990年由来のボックスシルエットにミリタリーやスポーツ、テクノの要素を盛り込んだスタイルを発表した。確かなテーラリング技術に裏打ちされたスタイルに、着る人次第で着こなしが変化するデザインを投入。ロング丈のダッフルコートにはウエストまで届くスリットが入り、そこにトグルボタンを取り付けることでシルエットに変化を与えている。スワローテイルのアウターはテイル部分を取り外すことでジャケットに様変わりするなどデザインの端々に創意工夫が垣間見られる。
DRIE VAN NOTEN
MARTIN MARGIELA