地球規模の温暖化に立ち向かうべく、デザイナーたちが発信したのは夏を楽しむポジティブルック。軽やかで清涼感のある素材に、海・水・風・リゾートをテーマに据えた色や柄、開放感のあるシルエットで快適な夏のスタイルを追求している。
ミラノに続いて開催されたパリメンズ (開催期間:2024年6月18〜23日)は69ブランドがコレクションを発表。そのうち日本勢は15ブランドを占める。”FASHION PRIZE OF TOKYO 2024”を受賞した「MASU (エムエーエスユー)」のほか、「BED j.w. FORD (ベッドフォード)」「KOLOR (カラー)」「WHITE MOUNTAINEERING (ホワイトマウンテニアリング)」ら日本の有力ブランドが名を連ね、日本人デザイナーが世界を席巻している。特筆すべきは38年にわたって「DRIES VAN NOTEN (ドリス・ヴァン・ノッテン)」を支えてきたデザイナー、ドリス・ヴァン・ノッテンによるラストショー。見どころ満載のシーズンとなった。
2025春夏のキートレンドは「軽やかさ」「プレッピー」「リゾート」、そして「トロンプルイユ (だまし絵)」。シアー素材やネットで素肌をのぞかせて清涼感をアピールする。ネクタイ、ブレザー、アーガイルニットといったカレッジファッションをスポーティにアレンジしたスタイルも提案された。海辺のリゾートに思いを馳せて、イルカやカニ、ヨット、ハイビスカスといったモチーフをプリントとして採用したり、オープンカラーシャツやショートパンツ、サファリジャケットなど開放的なアイテムでリゾート感を演出する。一見しただけではわからない、トロンプルイユのデザインが遊び心を誘う。
注目ブランドは、風が衣服にもたらす影響をスタイルに投影した「HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE (オム・プリッセ・イッセイ・ミヤケ)」。太さの異なる格子模様(プラッド)を風にさらし、なびかせたその瞬間を切り取ったプリントシリーズ”WINDSWEPT PLAID”をはじめとする、風が感じられるスタイルを提案した。格子模様の歪みは有機的かつ偶発的に見えて、風の動きをそのまま表現している。
「DRIES VAN NOTEN (ドリス・ヴァン・ノッテン)」は、ベルギーの現代アーティストEdith Dekyndt (エディス・デキント)の作品を着想源に、移ろいゆく時間の経過をスタイルに落とし込んだ。銀箔を敷き詰めたランウェイに登場したのは、縦のラインを強調させたダブルブレストのロングコート。透け感のあるオーガンジーをレイヤードすることで軽さをプラス。京都の墨流し技法がゆったりと過ぎる時間の流れを演出する。