パステルからネオンカラーまで、色彩豊かなメンズフォーマルに注目
2020春夏 パリメンズコレクションが2019年6月18日〜23日の6日間にわたって開催された。ここ数シーズン、メンズ/ウィメンズを通じてトレンドの軸を形成していた”Dyversity(ダイバーシティー:多様性)”は、”Sustainability(サスティナビリティー:継続可能性)”へと移行。ボタニカルやトロピカル、アニマルといったジャングルモチーフのプリントにはじまり、フィールドジャケット、カーゴパンツ、バミューダパンツといったサファリやミリタリーのアイテムまで、自然や環境を意識したスタイルが多数提案された。今シーズンはミラノメンズと比較してフォーマル色が強く、パステルカラーが豊富に提案されているのが特徴だ。
最も注目したいのはパステルカラーのリラックススーツを並べた「DIOR(ディオール)」。アーティスティック・ディレクターKim Jones (キム・ジョーンズ)は色覚異常の米国人アーティスト、Daniel Arsham(ダニエル・アーシャム)とコラボし、ディオールのアーカイブと、考古学的見地から作品を生み出すアーシャムの世界観をファッションに投影した。白からグレーのモノトーンをベースに、淡いグレーやピンク、ブルーをプラスしたカラーリングはアーシャムが見ている色彩世界を表現したもの。ムッシュ・ディオールが1950年代に提案したTailleur Oblique(タイユール・オブリーク:斜めのスーツ)を再構築したスーツ、2000春夏パリオートクチュールで発表されたニュースペーパープリントのセットアップ、ひび割れた鉱物の質感を表現したニットなどの作品は、「DIOR」がこれまでに築いた過去から現代までの時の流れを伝えている。
一方、「DRIES VAN NOTEN(ドリス・ヴァン・ノッテン)」はフォーマルスーツにアニマル柄やフローラル、ネオンカラーをミックスし、自由な感覚で着用できるスタイルを披露した。コレクションテーマは「archi-fluidity(超流動性)」。草木柄のジャカードジャケット x レオパード柄のパンツ、小花柄のシャツ x ゼブラ柄のジップアップブルゾン、大輪の花をあしらったブルゾン x グレーのピンストライプパンツなど、上下バラバラのプリントを組み合わせたスタイルが固定化しがちなメンズフォーマルに新たな概念を吹き込む。そこには写真家/映画監督の蜷川実花が2017年に出版したアート・ブック「New Noir2」からセレクトしたプリントシリーズも含まれる。色彩の魔術師が描き出す花や花火、都市風景といったモチーフが細身のスーツスタイルに大胆に落とし込まれている。
DIOR
DRIES VAN NOTEN