社会情勢に翻弄されるパリコレ。パワーショルダーのテーラードスーツが復活
新型コロナウイルスの鎮静化により息を吹き返すと思われたパリコレクションだが、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、ダークな雰囲気に包まれた。2022年2月28日〜3月8日の9日間にわたって開催された2022-2023秋冬コレクションには97ブランドが参加。約半数のブランドがフィリカルでのランウェイショーを展開する中、「BALMAIN (バルマン)」「BALENCIAGA (バレンシアガ)」「(STELLA McCARTNEY (ステラ・マッカートニー)」「LOUIS VUITTON (ルイ・ヴィトン)」「NANUSHKA (ナヌーシュカ)」などのメゾンがウクライナへの寄付を表明。ウクライナ人モデルを起用することが多いパリコレクションは、早々にウクライナへの配慮を示した。
注目トレンドは、質の良い服を長く着るというサスティナビリティの観点から生まれた“テーラリング”重視のスタイル。パワーショルダーのチェスターコートやジャケット、ピンストライプのスーツなど、ジェンダーの垣根を取り払ったスーツスタイルが多数提案された。その一方で、ビスチエやベアトップ、コルセットで女性らしさを強調するスタイルも登場。ナイトライフの復活を予感させるボディコンスタイルや、ウエストをシェイプし丸みのあるヒップラインを描いたドレスも見られた。センシャルな雰囲気を演出するシースルー素材のブラウスやチュールスカートも今シーズンのスタイルを彩る重要なアイテムだ。
Anthony Vaccarello (アンソニー・ヴァカレロ)が手がける「SAINT LAURENT (サンローラン)」はアール・デコからインスピレーションを得て、抑制の効いた直線的なシルエットのドレスルックを披露した。イメージソースは1920年代に活躍したイギリス上流階級出身の作家 / 社会活動家のナンシー・キュナード。身体のフォルムに沿うよう繊細に仕立てられたルックは、足元にシアーな素材を用いることで匂い立つようなエレガンスを演出する。トレンチコートやチェスターコートはかっちりとしたショルダーラインと大きなラペルで力強さをアピールする。
「VALENTINO (ヴァレンティノ)」が発表したのは服やメイク、会場のセットなど、すべてをピンクに染めた「Valentino Pink PP Collection」。クリエイティブ ディレクター Pierpaolo Piccioli (ピエールパオロ・ピッチョーリ)は、一見すると可能性が狭まったように思われる枠組みの中で、表現の可能性を最大限に広げることに挑戦。提案されたのはメンズとウィメンズを含んだ全81ルック。ふんだんにあしらわれたラッフル、ペタル、レース、そしてエンブロイダリー。ひとつの色が持つ力強さが、シェイプにも貫かれている。
SAINT LAURENT
VALENTINO