深刻化する地球環境問題がミラノトレンドに大きな影響を及ぼしている。ニューヨークのデザイナーたちが愛国心に重点を置いたのとは対照的に、ミラノでは天然素材やリサイクル素材を意図的に採用し、動植物にインスピレーション源を求めたスタイルが多数を占めた。
数シーズン前からサスティナビリティ(Sustainability)への傾倒は始まっていたが、ここまで顕著に自然志向への方向性が示されたことは驚きだ。ブランドのアイデンティティーを主張しながら、環境に配慮した作品を生み出す姿勢は、「DOLCE&GABBANA(ドルチェ&ガッバーナ)」「FENDI(フェンディ)」「JIL SANDER(ジル・サンダー)」「MARNI(マルニ)」「MISSONI(ミッソーニ)」「VERSACE(ヴェルサーチェ)」など、ミラノトレンドの支柱を担うブランドに強く見られる。
例えば、「MARNI」は環境プラスチック汚染に向き合うため、イタリアで集められたペットボトルをリサイクルした繊維“ニューライフ”を採用したり、過去のアーカイブ生地を用いたコレクションを提案している。また、ジャングルに生息する植物や野生動物、世界地図、海洋のモチーフなどをプリントに落とし込み、環境問題をアピール。余計な装飾を削ぎ落としたシンプルなデザインも環境配慮の一環といえる。
トレンドアイテムとして挙げられるのは、トレンチコート、サファリジャケット、ケープなど、すでにあるオーセンティックなアイテムを再構築したアウター。トップスではクラシカルな雰囲気が漂うボウタイブラウス、シルクやカシミヤで仕立てたポロ、肌見せデザインのミニマルニットなど。ボトムスではフェミニンでありながらシンプリシティを追求したティアードスカート、プリーツスカート、70年代フレアパンツ、サイドに遊びを加えたテーパードパンツなど。また、エレガントなムードのセットアップや、自然界のモチーフに彩られたゆったりシルエットのドレスも台頭した。反面、Tシャツやタンクトップといったストリートカジュアルは大きく後退した。
ミラノデザイナーの中で最も環境への意識を明確に示したのは「MARNI」(デザイナー:フランチェスコ・リッソ)。ジャングルに見立てたランウェイは、先に行われたメンズコレクションで使用したペットボトルが再利用されている。ボタニカルプリント満載のセットアップや、魚網を思わせるメッシュを取り入れたマーメイドドレスなど、原色使いでアフリカンなムード漂うワードローブを提案した。